ゴキゲン中飛車①~ゴキゲン中飛車の急所~

 現在後手振り飛車の主流として活躍しているゴキゲン中飛車の対策を、居飛車をもって考えていこう。
 ゴキゲン中飛車とは、現代風の角交換を恐れない振り飛車の一つで、従来の角道を止める振り飛車の天敵であった居飛車穴熊に組ませないようにしている。その画期的なアイデアから大流行し、居飛車はさまざまな対策を生み出すも、20年近く経った今でも後手振り飛車の主流の座を守っている。では具体的に対策を研究する前に、ゴキゲン中飛車の急所を探るために、従来のノーマル中飛車と比較する形で特徴を探っていきたい。

 この記事を動きを使いわかりやすく解説した動画


 ゴキゲン中飛車の記事ということで大幅に内容を省略するが、図がノーマル中飛車を激減に追い込んだ居飛車穴熊。ノーマル中飛車では居飛車穴熊に組まれること自体を防ぐことは難しい。上の図の形勢判断をしてみよう。
 まず、玉の堅さは居飛車穴熊が圧倒的に上。さらに▲2五歩とついているので▲3六歩と突き▲6八角~▲6六銀や▲4六銀を使い分けて攻撃を仕掛けられ、主導権を握っている形。対して後手は5筋から仕掛けようとしても仕掛けられず、先手が一方的に主導権を握っていることは明らかだ。
 それでは、ゴキゲン中飛車の図を、先のノーマル中飛車と比べて見てみよう。

 ゴキゲン中飛車図は初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲2五歩△5二飛▲6八玉△5五歩▲4八銀△3三角と進んだところ。まだなんてことのない最序盤だがわかりやすくするためにこの図で比較してみる。見てわかる通り、ゴキゲン中飛車はノーマル中飛車と比べて二つの違いがある。一つは、△5五歩と5筋の位を取っていること。そしてもう一つは、△4四歩と角道を閉じていないことだ。これらがどう居飛車穴熊対策になっているのだろうか。
 まず、△5五歩。これは居飛車の▲5六歩を防ぐことによって、先手の右銀が5七へ移動するのを防いでいる▲5七銀という配置は、▲6六銀から守りに使う手と▲4六銀から攻める手をにらんでおり、さらにそのままでも相手の飛車のいる筋をがっちり守っているという、すばらしいポジションなのだ。また、▲6八角と引いたときに▲2四歩の先手となることがないという点も見逃してはならない。そしてさらに、先手の指し手によっては、△5六歩と開戦する展開も視野に入れている。今までの主導権を一方的に握られていた振り飛車とは違う、というわけだ。△5五歩は居飛車の駒組みを二重で制限しているのだ。
 このように、△5五歩には様々な恩恵がある。そこで、ノーマル中飛車でこれを使ってみてはどうか、という発想が生まれる。すなわち、下図のような形を後手が目指してみてはどうか。

 このような形になれば、後手はそれなりに戦える。しかし、根本的な問題として、この形に組むことはできない。それは、下図のように、先手が先に▲5六歩とできるからである。

 この▲5六歩は先手の権利であり、後手が△5五歩と位を取る形を狙うことは不可能で、そもそも考える余地すらない…。この今までの状況を打破するのが、後手の二つ目の工夫、△4四歩と角道を閉じないことである。

 A図のように角道を止めないのが後手の工夫。対して▲6八玉や▲4八銀なら△5五歩と位をとれる。また、▲5六歩(B図)と位取りを拒否する手もあるが、後手が角道を止めていないので角交換系の振り飛車になる可能性が高く、▲5六歩と形を決めている先手が満足とはいえない。
 さて、このような過程で中飛車側は△5五歩と5筋の位を取る形を得ることができた。(いろいろ飛ばしすぎだろ!と思ったそこのアナタ。次回以降で回収していくので安心してください。)さて、△5五歩と位を取ることのメリットを先ほど紹介したが、反面デメリットも存在する。そこが居飛車側のねらい目である。
 まず大きいのは、角頭が薄いこと。△4四歩~△4三銀と構えるノーマル中飛車と違い△4四歩と止めないまま進めるゴキゲン中飛車は、角頭が薄い。また、それに伴って急戦にも少し弱い。後手としては角頭を狙われれば、△5六歩と捌けるかが勝負だ。
 次に、△5五歩が不安定であること。早々に△5五歩と位を取るので、展開によってはそれが負担になる可能性もある。後手は位を支えるか、早めに△5六歩と目標を捌くことが必要だ。
さて、今回はゴキゲン中飛車の急所を考えていった。次回はこれらをもとにして、居飛車側の様々な対策を比較していきたい。勘の鋭い方ならこの記事だけで、私がどの戦法を推すのかは薄々察しがついていると思うが…。

 ~ゴキゲン中飛車の棋理的な意味 まとめ~
・ノーマル中飛車は▲5六歩~▲5七銀とする居飛車穴熊に苦戦を強いられた。
・そこで振り飛車はそれを防ぎつつ主導権を握るため、△5五歩と位を取ることを考えた。
・それを実現するのが角道を閉じずに△5五歩と位を取るゴキゲン中飛車の駒組みである。
・ただし弱点もあり、ゴキゲン中飛車は角頭が薄く、はじめは△5五歩が不安定。居飛車はこれらをとがめていきたい。

 次回…ゴキゲン中飛車②~先手の様々な対策とその分析~

 

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする