指す将竜王戦2A準決勝 あずVSおわたん戦 自戦記

 当サイトは序盤研究ブログとなっていますが、それ以前に将棋ブログということで、ネット上の大会などの自戦記の発表の場としても活用していきたいと思います。
 指す将竜王戦A2組準決勝、あずVSおわたん戦が6/4の22時から行われました。おわたんさんは私よりレートが200高い強豪ですが、一度戦ったことがありそのときは勝ったので、勝てない相手ではなく楽しみな対局でした。序盤研究ブロガーにあるまじきつまらない序盤はひとまずおいておいて、相穴熊らしい終盤が見どころの一局です。それでは自戦記をご覧下さい。

 なお、太字になっているところは本譜の指し手で、そうでないところは変化手順など、と区別しています。

初手からの指し手
▲7六歩△8四歩▲5六歩△3四歩▲5五歩△4二玉▲5八飛△8五歩▲7七角△6二銀▲4八玉△3二玉▲3八玉△5二金▲6八銀△4四歩▲5七銀△4三金▲2八玉△3三角(第1図)

 

 おわたんさんはゴキゲン中飛車党であることは事前にわかっていたので、後手なら一直線穴熊というのは予定の作戦でした。一直線穴熊はゴキゲン中飛車の記事で中飛車側の主張を通していると書きましたが、千日手でも構わない後手であることから採用を決めました。
 上図までは自然な進行ですが、先手が工夫を見せます。

第1図以下の指し手

▲4六銀△2二玉▲3六歩△1二香▲3五歩△同歩▲同銀△1一玉▲4六歩(途中図)△3二金▲1八香△8四飛▲1九玉△5一銀▲2八銀△4二銀(第2図)

 早々に3五で歩を交換して▲4六歩(途中図)が先手の工夫。通常は▲3五銀と交換されたときには△4五歩と突いて▲4六銀や▲4六歩を防ぎますが、先手は囲いの手を回したおかげで△4五歩には▲3四歩が間に合います(△2二角と引けない)。先手の囲いの遅れを咎められないかと仕掛けも考えてみましたがまったく見つからず、少々作戦負けかもしれません。
 第2図まで囲い合いの進行ですが、ここで先手に疑問手が出ます。

第2図以下の指し手
▲5六飛△6四歩▲3九金△9四歩▲1六歩△1四歩▲9六歩(第3図)

 ▲5六飛が疑問手で、ここで△8六歩と仕掛けていれば後手が良かったです。▲同歩なら△8八歩▲同角△8六飛で後手良し。おわたんさんの予定は△8六歩に▲同角△8八歩▲7七桂△8九歩成▲7八金△9九と(変化図)という進行だったのですが、歩切れとはいえ香得が大きく後手が良かったでしょう。
 私が△8六歩に気づいたのは残念ながら▲9六歩と指されたあと。△8六歩▲同歩△8八歩に▲9七桂△8九歩成▲9八香という対応が発生しては△8六歩はやりづらくなりました。居飛車党ならひと目で見えるべきところのはずです、反省。
 一度チャンスを逃したことに気づくと形勢を悲観してしまい、このあと千日手を目指す方針へと転換していきます。

第3図以下の指し手
△6五歩▲7五歩△6四飛▲5九金△8四飛▲4九金△3四歩▲2六銀△2二銀▲2五銀△1三銀▲3六銀△3一銀▲2六歩△2二銀▲3八金△4二角▲2七銀△2四歩▲2八金△3三角▲4五歩△同歩▲同銀△4四歩▲3六銀△2三銀▲6八角△2二銀▲7七桂(第4図)

 長手数進めましたが、一言でまとめれば「後手が千日手狙いでおとなしくしているうちに先手は理想形に組み上げた」。今から見ても△1三銀△3三角など先手に攻撃の手段を与えないようにきわめて慎重に指しているのがわかります。そして第4図になってしまうと先手だけ左桂を活用し先手の角のほうが自由度が高く、さらに二歩を手持ちにするという大作戦負けに。第4図の時点でソフトでは500点以上の差がついています。
 次に▲6五桂と跳ねられてはどうにもならないので、後手はここから暴れます。結局、千日手という狙いも簡単に打開されてしまいました。先手の指し回しが光ります。

第4図以下の指し手

△5四歩▲同歩△同金▲5五歩△6四金▲2五歩△同歩▲3五歩△同歩▲同銀△3四歩▲2四歩△3五歩▲2三歩成△同銀▲3五角△3四歩▲5七角(第5図)

 △5四歩から囲いの一枚を繰り出して▲6五桂を防ぎますが、先手は手薄になった2~3筋から攻めかかります。このあたりは本当に翻弄されているという感じがしました。こちらの囲いが相手と比べて寂しいですが、なんとか最小限の被害で抑えます。なお本譜でも先手良しですが途中、▲3五歩に代えて▲3七桂(変化図)なら後手はどうにもならなかったようです。優勢なときにはなかなか見えない手ですね。
 なんとか被害を最小限に抑えてこれからというところですが、後手に悪手が出ます。

第5図以下の指し手

△4五歩▲4四歩△3五銀(第6図)

 △4五歩が悪手。5五への金や角の活用を見込んで自然な一手かと思っていましたが、▲4四歩が鋭手。△同角には▲2四歩で銀がとられてしまうので、この歩は取れません。自然に拠点を作られかなり焦りましたが、気合で打った△3五銀が波乱を呼びます。

第6図以下の指し手

▲3七桂△4四角▲4五桂△5五金▲3三歩△同桂▲同桂成△同角▲4五桂△同金▲5二飛成(第7図)

 △3五銀は▲4三銀なら△4四角として耐え忍ぶ読み。とはいえそこで▲2四歩(変化図1)が好手で先手勝勢となるのですが…。しかし3五銀のプレッシャーの効果があったのか、先手は▲3七桂と間違えます。△4四角と拠点を払って形勢は互角に戻り、▲4五桂△5五金(途中図)で後手優勢に早変わり。1分将棋の闇が垣間見えた瞬間です。△4四角で形勢の好転を意識し、丁寧に面倒を見ました。  ▲4五桂△同金に代えて△5六金▲3三桂成△同金▲5一角△4九飛▲3九金△4三飛成(変化図2)という展開もあり、こちらも後手優勢のようです。本譜は先手は飛車を成り込んだものの後手の銀冠が妙に堅く後手優勢の局面。この手番をうまく使えれば勝ちですが…。

第7図以下の指し手

△2六歩▲同銀△同銀▲2四歩(第8図)

 △2六歩と突くのは自然に見えましたが疑問手。ここは△4六桂としておけば先手の角の働きを封じて良い寄せ方でした。本譜は△2六歩▲同銀と取られて動揺。△同銀▲2四歩となった局面は再び難解な形勢に。▲同銀に△3六桂(変化図)としておけばまだ優勢を保てたのですが、▲同銀をまったく読んでおらず動揺で冷静さを欠きました。

第8図以下の指し手

△2七桂(第9図)

 △2七桂が勝負手。ソフト的には最善手のようですが、勝負手のつもりで指しました。ここを△2七歩だと、以下▲2三歩成△2八歩成▲同金△2三金▲3二銀△2二銀▲4一竜△3一桂▲同銀成△同銀▲3二銀△2二銀打▲4三桂(変化図)と進んで後手は受けなしに。もちろんこんな負けを読み切っていたわけではありませんが、▲2三歩成まで進むと負けそうというのが第一感だったので、△2七桂と勝負しました。結果的にこの勝負手が功を奏します。

第9図以下の指し手

▲同金左△同銀成▲4一竜△2一歩▲2三歩成△2八成銀▲同玉(第10図)

 ▲同金左が悪手。ここを▲同金直なら、△同銀成▲2三歩成と本譜と似たように進んだときに△2八銀成の王手が利かず先手勝ちでした。さらに、△同銀成▲4一竜が悪手。△2一歩で後手玉が絶対詰まない形になる上、5五角の飛びだしに利かなくなるのが大きいのです。▲4一竜に代えて▲2七同金としていれば、以下△3八銀▲2九銀(変化図)となり、この局面はあまり自信がありませんでした。実際には△2六桂で勝ちのようですが、実戦で見つけられたかどうか…。
 ▲2三歩成とした局面では、△2八銀成▲同玉から王手が続きそうな上、危なければ△2三金~△2二金打と手を戻すこともできるので、正しく指せば後手が勝てると直感的に思っていました。
 さて、いよいよ最終盤です。

 突然ですが、問題です。実は第10図では先手玉に詰みがありますが、わかりますか? 解答は一番下に。

第10図以下の指し手

△5五角▲4六歩△3六桂▲3八玉△4八金▲同角△同桂成▲同玉△2六角▲3七桂△同角成▲同玉△4六角(投了図)まで130手で後手の勝ち

 実戦は詰みを逃して△5五角。とはいえこれも相当に厳しい手で、▲4六歩には△3六桂から本譜の順で詰みでした。唯一詰みを逃れられたのは▲3九玉でしたが、△4七桂▲4八玉△5九銀▲4七玉△4六金打▲同角△同金▲同龍△同角(変化図)と竜を外してしまえば後手玉は詰まず後手勝ちでした。
 本譜△2六角の王手に▲5八玉は△5七銀▲同玉△4六角以下詰み、投了図以下▲4八玉も△5七銀▲3九玉△4七桂以下詰みです。

 本局は、序中盤に作戦負けを喫してしまいうまくペースを持っていかれましたが、1分将棋での相手のミスをなんとか咎め勝つことができました。正直、運で勝ったといっても過言ではないと思います。秒読みや動揺の中での冷静さは課題ですが、最後の詰みなどをきっちりと読み切って指せたのは良かったです。

次回の指す将竜王戦の対局は6/18 21時からを予定しています。次回も自戦記を書く予定なので、よろしくお願いします!

第10図からの詰み筋

△3六桂▲3八玉△2八金▲4九玉△4八銀▲同角△同桂成▲同玉△3九角▲5八玉△5四飛(途中図)▲6八玉△5九飛成▲同玉△7七角成▲
6八桂△4七桂▲6八玉△7八金▲5八玉△6八馬▲4七玉△5七馬▲3七玉△4八馬(詰め上がり図)まで25手詰め。ご研究ください。

次回…決勝戦 あずVS shinri 戦

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